【震度と建物の関係】構造設計一級建築士のサラリーマンが語る。

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地震と建物との関係を知って、地震が起こった時に備えたい
かめてつ
かめてつです。

構造設計一級建築士の僕は、地震から皆さんや建物を守る仕事をしています。

震度と建物の関係について解説します。

誰にも求められない知識かもしれませんが、一般的な人の人生の中で最も高額の買い物である建物との関係に、興味があることを信じて解説します。

気象庁震度階級

日本の震度

現在の震度階級は、0、1、2、3、4、5弱、5強、6弱、6強、7の10段階あります。震度には0や5と6には弱と強があることを知っている人は少ないかもしませんね。

それぞれの震度の、人の体感・行動、屋内外の状況とともに気象庁震度階級関連解説表に詳しく記載されています。

震度とともにマグニチュードという言葉もよく聞くと思いますが、こちらは地震そのものの規模を示しています。震度とは日本オリジナルのもので、海外では別の尺度に基づいて表記されます。

海外で地震が起こった際にマグニチュードで報じられることが多いのはこのためでしょう。

余談ですが1996年まで、震度は体感や建物などの被害状況から設定されていました。よって1995年の阪神淡路大震災と、その後の地震では同じ尺度で表した震度ではありません。

補足説明

前述のとおり日本の震度階級は7が最大になります。これは、どれだけ大きな地震が起こっても(極端にいうと地球が真っ二つに割れても)、日本の震度で表すと7になります。

注意

震度7でも壊れない建物という表現がされることがありますが、正確に表現すると「震度6強に近い震度7」になります。

震度と建物の関係

建築基準法とは

街中のほとんどの建物は建築基準法という法律に基づき造られており、第一条では次のように記載されています。

第一条  この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。

引用:内閣府 防災情報のページ

僕の仕事(構造設計)は、最低基準であるこの法律を守ることは当然のことながら、世の中の様々な知見に基づき設計し、みなさんを地震から守ることです。

建物はどれくらいの震度まで耐えられるか

具体的には言えない

拍子抜けしてしまうかもしれませんが、これがもっとも真っ直ぐな答えです。(同業者の理解はきっと得られたはず)

建物の営業マンにこの質問をした時に、具体的な震度を答えるようでしたら、よく理解していない可能性があるので要注意です。

その理由は?

建築基準法に「震度」の二文字はない

建築基準法の中に「震度」の二文字はなく、具体的な震度に耐えるように設計していない(できない)ことが理由です。

具体的な震度に対して設計して下さい!とお願いされたとしても、現在の法制度や技術からすると困難(ほぼ無理)なのですが、建物を買う人にとっては気になるところですよね。

僕はマンションの販売説明会などで、この質問をされた時には「具体的には言えないけども」という前置きをした上で震度6弱〜6強くらいと回答しています。(歯切れ悪いですね。)

国土交通省はこう言っている

現在の建築基準法の耐震基準(新耐震基準)を満たしている建築物は、どの程度の地震に耐えられるのですか?

現行の耐震耐震基準(新耐震基準)は昭和56年6月から適用されていますが、中規模の地震(震度5強程度)に対しては、ほとんど損傷を生じず、極めて稀にしか発生しない大規模の地震(震度6強から震度7程度)に対しても、人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じないことを目標としています。

引用:国土交通省 マンションの耐震性等についてのQ&Aについて

専門家の僕はこの文章を理解することはできるのですが、専門外の人には難しいですよね。簡単に表現すると次のようになります。

  1. 中規模の地震の時は、ほとんど壊れない (少し壊れる)
  2. 大規模の地震の時は、人が死ぬような壊れ方はしない (けっこう壊れる)

建築基準法を守っていれば「建物は壊れない」と思う人が多いことに対する表現ですが、国土交通省の方の苦労が垣間見えます。

物事を正確に伝えるのは難しいですね。

ちなみに旧耐震の建物は?

こちらも具体的には言えない。というのが正確な答えですが、ちまたでは5強と言われることがあります。

旧耐震は1981年以前の建物で、5強は1996年に登場したものなので、理論的に説明できるものではないと思います。

おそらく、旧耐震時代の建物が被災した時の、被害状況からの経験測だと思います。

追伸

どの分野でも技術者は、物事をはっきりと言い切ることができないことが多くあります。言い切るとそれに伴う責任が大きいのでやむを得ないのですが、説明している側も歯切れの悪さは十分感じています。

いつかのニュースで「影響が少ない」と表現した技術者に対して「少ないということは影響はあるんですね?」と詰め寄っている人を見た時、切ない気持ちになったことを思い出しました。

このブログを通して表現力豊かな文章力を身につけることで、世の中の構造設計者から一歩抜きん出ることが、「普通からの脱却」につながると信じています。