- 構造設計一級建築士の関与が必要な建築物の法的要件
- 構造設計一級建築士と安全証明書の関係
コンテンツ
構造設計一級建築士の関与が必要な建築物
士法 第20条の2(構造設計に関する特例)
構造設計一級建築士は、第3条第1項に規定する建築物のうち建築基準法第20条第1項第一号又は第二号に掲げる建築物に該当するものの構造設計を行つた場合においては、前条第1項の規定によるほか、その構造設計図書に構造設計一級建築士である旨の表示をしなければならない。構造設計図書の一部を変更した場合も同様とする。
構造設計一級建築士以外の一級建築士は、前項の建築物の構造設計を行つた場合においては、国土交通省令で定めるところにより、構造設計一級建築士に当該構造設計に係る建築物が建築基準法第20条(第1項第一号又は第二号に係る部分に限る。)の規定及びこれに基づく命令の規定(以下「構造関係規定」という。)に適合するかどうかの確認を求めなければならない。構造設計図書の一部を変更した場合も同様とする。
構造設計一級建築士の関与については、この法文からスタートします。
2項は構造設計一級建築士以外の場合のことを記載しているだけで、基本的な内容は1項と同じです。
士法 第3条 (一級建築士でなければできない設計又は工事監理)
次の各号に掲げる建築物(建築基準法第85条第1項又は第2項に規定する応急仮設建築物を除く。以下この章中同様とする。)を新築する場合においては、一級建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。
一号
学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーデイトリアムを有しないものを除く。)又は百貨店の用途に供する建築物で、延べ面積が500m2をこえるもの
二号
木造の建築物又は建築物の部分で、高さが13m又は軒の高さが9mを超えるもの
三号
鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロツク造若しくは無筋コンクリート造の建築物又は建築物の部分で、延べ面積が300m2、高さが13m又は軒の高さが9mをこえるもの
四号
延べ面積が1,000m2をこえ、且つ、階数が2以上の建築物
いわゆる一級建築士の独占業務のことに関する法文です。
ここに該当しないものは、この時点で構造設計一級建築士の関与は不要になります。
法 第20条(構造耐力)
建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。
一号
高さが60mを超える建築物 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。この場合において、その構造方法は、荷重及び外力によつて建築物の各部分に連続的に生ずる力及び変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。
二号
高さが60m以下の建築物のうち、第6条第1項第二号に掲げる建築物(高さが13m又は軒の高さが9mを超えるものに限る。)又は同項第三号に掲げる建築物(地階を除く階数が4以上である鉄骨造の建築物、高さが20mを超える鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物に限る。) 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。
イ
当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。この場合において、その構造方法は、地震力によつて建築物の地上部分の各階に生ずる水平方向の変形を把握することその他の政令で定める基準に従つた構造計算で、国土交通大臣が定めた方法によるもの又は国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有すること。
ロ
前号に定める基準に適合すること。
構造耐力に関する法文ですが、建築物の規模に着目して読み進めます。
二号の「政令で定める建築物」は、法施行令 第36条の2に記載されている建築物のことです。
法 第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)
二
木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500m2、高さが13m若しくは軒の高さが9m超えるもの
法施行令 第36条の2(地階を除く階数が4以上である鉄骨造の建築物等に準ずる建築物)
法第20条第1項第二号の政令で定める建築物は、次に掲げる建築物とする。
一
地階を除く階数が4以上である組積造又は補強コンクリートブロック造の建築物
二
地階を除く階数が3以下である鉄骨造の建築物であつて、高さが13m又は軒の高さが9mを超えるも
の
三
鉄筋コンクリート造と鉄骨鉄筋コンクリート造とを併用する建築物であつて、高さが20mを超えるもの
四
木造、組積造、補強コンクリートブロック造若しくは鉄骨造のうち2以上の構造を併用する建築物又はこれらの構造のうち1以上の構造と鉄筋コンクリート造若しくは鉄骨鉄筋コンクリート造とを併用する建築物であつて、次のイ又はロのいずれかに該当するもの
イ
地階を除く階数が4以上である建築物
ロ
高さが13m又は軒の高さが9mを超える建築物
五
前各号に掲げるもののほか、その安全性を確かめるために地震力によつて地上部分の各階に生ずる水平方向の変形を把握することが必要であるものとして、構造又は規模を限つて国土交通大臣が指定する建築物
五号は、平成19年国交告第593号のことを指しますが、これは構造形式別の詳細な構造計算の内容なのでここでは割愛します。建築基準法施行令第36条の2第五号の国土交通大臣が指定する建築物を定める件
まとめ
ここまでの法文をフローチャート風にまとめてみました。構造設計一級建築士の関与まとめ
平成19年国交告第593号関連の内容を省略していますが、私と同様にゼネコンで構造設計をしている人にとっては広範囲をカバーしているのではないでしょうか。
漏れ、間違い等ありましたら筆者までご一報ください。
安全証明書との関係
士法 第20条 (業務に必要な表示行為)
一級建築士、二級建築士又は木造建築士は、構造計算によつて建築物の安全性を確かめた場合においては、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、その旨の証明書を設計の委託者に交付しなければならない。ただし、次条第1項又は第2項の規定の適用がある場合は、この限りでない。
つまり、構造計算を行った場合はすべてにおいて安全証明書が必要で、青線部分に該当する場合は適用が除外されています。
「次条第1項又は第2項」とは、士法 第20条の2を指します。
士法 第20条の2 (構造設計に関する特例)
構造設計一級建築士は、第3条第1項に規定する建築物のうち建築基準法第20条第1項第一号又は第二号に掲げる建築物に該当するものの構造設計を行つた場合においては、前条第1項の規定によるほか、その構造設計図書に構造設計一級建築士である旨の表示をしなければならない。構造設計図書の一部を変更した場合も同様とする。
構造設計一級建築士以外の一級建築士は、前項の建築物の構造設計を行つた場合においては、国土交通省令で定めるところにより、構造設計一級建築士に当該構造設計に係る建築物が建築基準法第20条(第1項第一号又は第二号に係る部分に限る。)の規定及びこれに基づく命令の規定(以下「構造関係規定」という。)に適合するかどうかの確認を求めなければならない。構造設計図書の一部を変更した場合も同様とする。
まとめ
- 構造設計一級建築士の関与が必要な建築物の構造計算を行った場合は不要
- 構造設計一級建築士が関与した旨を表示すれば不要(たぶん)
あとがき
普段なんとなく理解はしているが、聞かれると答えに困る。今回まとめた内容は私にとってこんなイメージのものです。
法令集をじっくり見ることで勉強になった部分もあるので、今後もこのタイプのまとめ記事を書いていこうと思います。
平成21年(2009年)5月27日に構造設計一級建築士の関与が義務付けられましたが、理解が浅いので構造設計一級建築士である自分にとってもわかりやすいようにまとめました。
構造設計一級建築士による設計への関与の義務づけ
結論だけ知りたい方はまとめまで読み飛ばして下さい。